離乳食

離乳食は「白身魚から」じゃないとダメって、ほんと?

Sachiko

はじめに

「離乳食はまず白身魚から」
育児書や健診でよく耳にするアドバイスです。

けれども実は、「白身魚から始めなければならない」という強い科学的根拠はありません
近年は鉄分不足の観点から、赤身魚や肉を早めに取り入れることも推奨されています。

今回は、日本のガイドラインに記載されている内容と、国際的な考え方を紹介しながら、赤身魚スタートのメリットについて解説します。

日本のガイドラインにおける「白身魚から」

厚生労働省『授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)』には、次のように記されています。

「慣れてきたら、つぶした豆腐・白身魚・固ゆでした卵黄などを試してみる」
「離乳が進むにつれ、魚は白身魚から赤身魚、青皮魚へ、卵は卵黄から全卵へと進めていく」
(厚生労働省『授乳・離乳の支援ガイド』2019年版)

つまり、日本のガイドラインには「白身魚から→赤身魚→青魚へ」という順番が示されています。
ただし、この記述は「消化にやさしそう」「安心感がある」といった経験的な考え方を反映したものであり、科学的に比較試験で証明されたものではないのです。

WHOの国際的な考え方

WHOの『Guideline for complementary feeding of infants and young children 6–23 months of age』(2023年)では、次のように述べられています。

「肉、魚、卵などの動物性食品を、離乳期から日常的に取り入れることが推奨される」
(WHO, Complementary feeding guideline 2023)

ここでは「白身魚から」といった順序の指定はなく、むしろ「鉄を含む食品を早めに取り入れること」が強調されています。

白身魚と赤身魚の鉄分量の違い

離乳食でよく使われる魚の鉄分量を比べてみると、違いは一目瞭然です。
(いずれも可食部100gあたり、日本食品標準成分表2020年版より)

真鯛(まだい) … 約0.3mg
 離乳食開始の白身魚の代表ですが、鉄はごくわずかしか含まれていません。

タラ(まだら) … 約0.2mg
 淡白で離乳食に使いやすい一方、鉄分は非常に少ない魚です。

サケ(しろざけ) … 約0.8mg
 白身魚に比べれば鉄はやや多め。

マグロ(めばち・赤身) … 約1.3mg
 赤身魚の代表格で、鉄をしっかり含んでいます。

カツオ(春獲り) … 約1.9mg
 魚の中でもトップクラスの鉄量。赤ちゃんの鉄補給に非常に役立ちます。

白身魚では全く鉄補給になりません….

ツナ缶でもいいの?

じゃあ、忙しいときにパッと使えるツナ缶を離乳食に使っていいのかな?そんな疑問が湧いてくるかもしれません。

結論からいうと、ツナ缶も工夫すれば離乳食に使えます!!
しかも鉄分もある程度含まれているんです。

ツナ缶の鉄分量は?

日本食品標準成分表や研究報告によると、ツナ缶(水煮・フレークタイプ)には可食部100gあたり 約0.6mgの鉄が含まれています(JSTAGE論文より[家庭科・食生活学会誌, 2010])。
これは、白身魚の真鯛(0.3mg/100g)やタラ(0.2mg/100g)よりは多めで、鉄補給にも役立ちます。ただし、赤身のマグロ(1.3mg/100g)やカツオ(1.9mg/100g)と比べると、ツナ缶はやや少なめです。

使うときの注意点

  • 油漬けタイプは避ける:大人用のツナ缶は塩分や油分が多いものがあります。必ず「水煮タイプ」「無添加タイプ」を選びましょう。油漬けは脂質が多すぎて乳児には不向きです。
  • 調理の工夫:湯通しして余分な油や塩分を落とし、おかゆや野菜に混ぜて与えると安心。

赤身魚を始めるときのポイント

  • 少量から始める:どんな食材でもですが、最初は小さじ1程度から。
  • しっかり加熱:蒸す・煮るなどで柔らかくし、骨と皮を丁寧に取り除く。
  • 野菜と組み合わせる:トマトやブロッコリーなどビタミンCと一緒に摂ると鉄の吸収がアップ。
  • 負担は軽く:お魚の調理となるとハードルが高く感じる方もいらっしゃるかもしれません。冷凍刺身用パックを活用しても良いですね!

まとめ

日本のガイドラインには「魚は白身から」と記されていますが、それは伝統的な進め方に基づいた記載で、科学的に必須なルールではないんです!
WHOをはじめ国際的には「赤身魚を含む動物性食品を離乳初期から取り入れる」ことが推奨されています。

あかちゃんにとって大事なのは「安全に、少しずつ、多様な食品を取り入れること」。
鉄不足を予防するためにも、赤身魚や肉を早めに離乳食に加えていくことはとても有効です。

次回は赤身魚や肉以外の植物性食品から鉄分を取る方法、その他、解説したいと思います。

ABOUT ME
ぐんぐん院長サチコ
ぐんぐん院長サチコ
みなさんの一番近くにいる地域の「かかりつけ」小児科専門医。
20年以上小児診療に携わりながら、3人の子育てをしてきました。

子どもの年齢とともに、気になることや悩みも変化していく。
親も子どもと共にバージョンアップしていくことは必要不可欠です。

だからこそ、子育て中に知っておいた方がよいこと、 育児書にはないけれど大切なこと、
いろんな情報が溢れていて困った、、、というときに 正しい知識をサクッと知れる「メモ帖」みたいなのが作れたらいいなと思ってます。

少しずつの記事の更新ですが、楽しみにしていてくださいね。
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