お口の発達と食形態の関係【小児科医が解説】
離乳食を始めるときに大切なのは、赤ちゃんの「お口の発達」に合わせた食形態を選んであげること。嚥下機能(飲み込みの力)は大人と違って一気に完成するわけではなく、離乳の進行とともに段階的に育っていきます。
あかちゃんと大人は何が違うの?
その答えと、それぞれの発達段階に応じた食形態について解説します!
乳児嚥下と成人嚥下
あかちゃんと大人では、口や喉の構造が違うため、飲み込み方が根本的に違います。
赤ちゃんの飲み込み方(乳児嚥下):舌を前方に突き出すように動かし、母乳やミルクを飲み込みます。口を大きく開けたままでもゴックンと飲み込めて、なんと呼吸と嚥下を同時に行うこともできます。歯ぐきで噛む必要はなく、液体をそのまま喉に送り込むことに特化した飲み方です。
大人の飲み込み方(成人嚥下):食べ物をよく噛んで塊(食塊)にし、舌を後方に引いて喉の奥へ送り込みます。飲み込むときはしっかり口を閉じ、嚥下している一瞬は息を止める(呼吸と嚥下を別々に行う)必要があります。これはさまざまな固形物を安全に飲み込むための動きです。
生後5~6か月ごろ:ペースト状からスタート
- お口の発達:舌はまだ前後の動きが中心。乳児嚥下で飲み込もうとします。口を開けたまま舌を前後に動かして飲み込もうとするため、口から漏れ出てしまいます。
- よく見られる反応:スプーンを入れても舌で前に押し出す「舌挺出反射」。まだ多くをゴックンできません。
- 適した食形態:なめらかなペースト状(スプーンから落ちない硬さの”おかゆ”や野菜ペースト)。
- この時期は“栄養”よりも“練習”。ミルク以外の味や食べ方に慣れる段階です。
7~8か月ごろ:唇の力が育ってくる
- お口の発達:上唇でスプーンの食べ物を取り込めるようになり、口を閉じて嚥下できるようになります。舌の上下運動が始まり、舌を上あごでまとまった食べ物をつぶして飲み込めるようにする”押しつぶし機能”が育ってきます。
- 適した食形態:舌でつぶせる硬さでまとまりやすい、ムース状やマッシュ状で押しつぶしを体験していきます。豆腐やよく煮た野菜などでチャレンジ。舌でつぶせないものは出してしまいます。
- 少しずつ食べられる量が増えてきます。
9~11か月ごろ:歯ぐきでモグモグ
- お口の発達:舌が左右に動き、食べ物を口の中で移動させられるようになります。歯ぐきに乗せてしっかりつぶすことができるようになります。
- 適した食形態:個人差がある時期ですが、硬さはバナナ程度の固さ。歯ぐきでつぶせる硬さのものにします。
- 「モグモグ期」と呼ばれる段階で、飲み込みだけでなく“つぶす練習”が始まります。歯や歯ぐき、舌の協調でモグモグできるようになるこの時期までに、咀嚼が必要なものを与えると丸飲みをしてしまう原因に。
1歳以降:奥歯でカミカミ
- お口の発達:乳臼歯(奥歯)が生え始め、硬いものも噛めるようになってきます。
- 適した食形態:一口大のやわらかい固形食。手づかみやスプーンで自分で食べる練習も進みます。
- 大人と同じような食事に少しずつ近づき、家族で一緒に食べる楽しみが増える時期です。
まとめ
赤ちゃんのお口の発達は「ミルク専用モード」から「モグモグ・カミカミできる大人の嚥下」へと少しずつ進化していきます。唇を使って食べ物を取り込むこと、そして成人嚥下が獲得されることが離乳の目的。
だからこそ、お口の発達に合った食形態を与えることが大切。早すぎる固形食は誤嚥や窒息のリスクになるだけではなく、丸飲みなどの癖につながる可能性があります。個人差もあり「○ヶ月で〜しましょう」という決まりはありません。SNSや育児書通りに進まないのはよくあることです。
「これでいいのかな?」と不安になったら、ぜひ ぐんぐんキッズクリニックの「あかちゃん外来」に相談に来てください。
医師だけでなく、看護スタッフや保育スタッフとチームでサポートします。
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