離乳食

食物アレルギーの原因が変わりつつある話!

Sachiko

数回に渡り、「離乳食初期のお悩み」について書いてきました。
今回は医学的なお話、よく聞かれるご質問の一つ、”アレルギー予防”について、
解説していきたいと思います!

はじめに:アレルギーの“主役”が少しずつ変わってきています

昔は「食物アレルギー=卵・牛乳・小麦」という印象が強かったですよね。
私たちも卵、牛乳、小麦などのアレルギーを起こしやすい食物は少しずつね、と、指導してきました。
でも、最近の研究では、くるみやカシューナッツなどの“木の実(ナッツ類)”によるアレルギーが急増し、今や食物アレルギーの原因として卵に次ぐ2位!になっていることがわかりました。

「ナッツなんて、まだ食べさせてないのに?」と思うママもいるかもしれません。
実は、ナッツは“触れる”“吸い込む”“微量に混ざる”だけでも感作(アレルギーのきっかけ)されることがあるんです。

最近の研究でわかってきたこと

(母子栄養協会HPより)

このグラフでもわかるように、令和6年のデータでは木の実(ナッツ)は卵に次いで2位!
(ピーナッツはマメ科のもので、別です)


また最近カシューナッツが急激に増加したことを受け、
今年から食物アレルギー表示が義務化させることになりました。

どうしてナッツアレルギーが増えているの?

ナッツアレルギー増加には、いくつかの要因が考えられています。
ここでは、医学的知見と日常生活の両面から解説します。

要因内容
食生活の変化お菓子・シリアル・パン・スムージーなどにナッツがよく使われるようになりました。赤ちゃんの身の回りに“知らずに触れる・食べる”機会が増えています。
交差感作の拡大花粉症(特にシラカンバ・ハンノキ)との“交差反応”で、ナッツにもアレルギーを示す子がいます。
検査技術の進歩以前は見逃されていた軽い感作が、分子レベル(コンポーネント診断)で拾えるようになりました。そのため「報告数」が増えて見えている部分もあります。

「避ける」だけでは防げない時代へ

「ナッツ=危険だから絶対避けよう」
――この考え方が、少しずつ変わってきています。

最新の考え方では、

 “皮膚からの微量暴露”で感作が成立する一方で、
“口からの少量摂取”で免疫寛容が誘導される

というデュアルアレルゲン仮説が重視されています。

つまり、「触るのに食べない」状態が長く続くと、むしろ感作リスクが上がる可能性があるのです。
(参考:Kulis MD et al., J Allergy Clin Immunol. 2022; “Dual Allergen Exposure Hypothesis”

皮膚ケアと同時に(してから)“少しずつ慣れる”が新常識

ナッツに限らず、どの食材のアレルギー予防においても、湿疹の治療とスキンケアが最優先。
皮膚炎がある状態では、食物のたんぱく質が皮膚から入り込み、アレルギーを起こしやすくなります。

この考え方は、日本で行われた有名な研究「PETIT試験(Natsume O, Lancet, 2017)」でも裏付けられています。
この試験では、

  • 湿疹をしっかり治療した上で
  • 加熱卵を少量ずつ早期導入
    したグループでは、卵アレルギーの発症が有意に減少しました。
    → 「皮膚を整える × 少しずつ食べる」が、予防のキーワードです。

まとめ

  • 最近はナッツ・くるみなど木の実アレルギーが増加傾向
  • 「食べないで避ける」よりも、皮膚をきれいに整えながら、少しずつ口から慣れていくことが大切。
  • あかちゃんの皮膚ケアで心配なことがあったらワクチンのときでも大丈夫、いつでもご相談ください!
  • ただし、誤嚥や窒息のリスクが高いピーナッツやナッツ類は、乳幼児にそのまま食べさせるのは危険!市販の滑らかなパウダーやペーストの形態で離乳食に混ぜて食べていきます。
    症状が強くでがちなので、アトピー性皮膚炎等ハイリスクのお子さまはご相談くださいね。

困ったことがあったら、ぐんぐんキッズなかもず院のあかちゃん外来へご相談ください。お待ちしています!

ABOUT ME
ぐんぐん院長サチコ
ぐんぐん院長サチコ
みなさんの一番近くにいる地域の「かかりつけ」小児科専門医。
20年以上小児診療に携わりながら、3人の子育てをしてきました。

子どもの年齢とともに、気になることや悩みも変化していく。
親も子どもと共にバージョンアップしていくことは必要不可欠です。

だからこそ、子育て中に知っておいた方がよいこと、 育児書にはないけれど大切なこと、
いろんな情報が溢れていて困った、、、というときに 正しい知識をサクッと知れる「メモ帖」みたいなのが作れたらいいなと思ってます。

少しずつの記事の更新ですが、楽しみにしていてくださいね。
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