成長・発達

離乳期のあかちゃん、「スプーンで水を飲む」は実は難しい!

Sachiko

外来でのご相談:「刻み食でオエッとえずくんです」

先日の外来でこんな相談がありました。

「8ヶ月の子で、離乳食がなかなか進まないんです。
刻んだ野菜をスプーンであげると、オエッとえずくんです。」

特定の野菜だけえずく、というので、どうなっているんだろう?と、動画を見せてもらいました。離乳食タイムの実際の様子は….
野菜スープのような「水分+刻み食」をスプーンですくって口に入れ、もぐもぐと咀嚼して少ししたら、オェッとえずく。
一見、自然な離乳食スタイルに見えますが、
これ、実は“飲み込みの発達段階”に合っていない食形態なんです!

ポイント:あかちゃんにとって「スプーンで水分を飲む」のは難しい!

あかちゃんは、生まれてすぐから乳首を咥えて飲む=乳児嚥下(にゅうじえんげ)をしています。
これは、舌で乳首を押しつぶすようにして、喉の奥に自然と流し込む動き。
つまり、「吸って」「流れるまま飲む」スタイルです。

ところが
スプーンで与える水分は、“吸えない+舌でまとめないと飲めない”という、まったく別のスキルが必要。
これが成人嚥下(せいじんえんげ)への第一歩なんです。

赤ちゃんにとっては、
「固形をモグモグする」よりも、
「水をスプーンで飲む」ほうが、実はずっと難しいんですね。

「水分+刻み」は、実は難易度が高い!

スープに刻んだ野菜やご飯を混ぜると、
赤ちゃんの口の中で「もぐもぐしているうちに水分が先に流れる」ことがあります。

これは、口の中で水分をまとめる力(舌のコントロール)が未熟な赤ちゃんにとって、

「固いものはまだ口にあるのに、水分だけ喉に落ちる」
という状況。

結果として、

  • オエッとえずく
  • むせる
  • 離乳食を嫌がる

というサイクルに入りがちです。

このえずいてしまうあかちゃんのご両親にも、
”とろみのあるペースト”と”水分”のように分ける形にする
または、
”とろみ”をしっかりつけてお野菜と水分が一体化し舌の上でまとまりやすくする
などの提案をしました。

嚥下の発達ステップを見てみよう

発達段階できるようになること嚥下の種類練習のポイント
① 新生児〜乳児期乳首を吸う乳児嚥下舌を前後に動かして飲む
② 中期(6〜8ヶ月)ペーストを唇で取り込む移行期嚥下スプーンに慣れる時期
③ 後期(9〜11ヶ月)舌でまとめて飲み込む成人嚥下への準備水分・汁物はまだ慎重に
④ 完了期(1歳頃)舌でまとめ、嚥下のタイミングを自分で取る成人嚥下コップ・ストロー導入期

正しいステップ:「飲み物」も“発達に合わせて練習”

スプーンでの水分摂取は、実はかなり後期の練習項目
順番を整理すると次のようになります。

ステップ練習内容補足
Step 1哺乳瓶・母乳での乳児嚥下(乳児嚥下)舌の前後運動で飲む
Step 2乳児用ストロー(舌でストローを巻くようにして飲む乳児嚥下)哺乳と同じ吸う力で可能
Step 3スプーンで一口の水舌でまとめて飲み込む練習。最初はごく少量!
Step 4コップで一口ずつ舌のコントロール+呼吸のタイミング
Step 5ストロー(成人嚥下型)

ここでのポイントは
「スプーンで飲む」よりも「乳児用ストロー(深くくわえるタイプ)の方が先にできる」んです。
これは多くの保護者が“逆”に思っている点です。

まとめ

離乳食の水分がむせる原因となっている子も少なくありません。えずく、というお悩みの方は一度どういう離乳食の形態のときにえずくのか、注目してみてください!

そして、スプーンでの水分摂取はあかちゃんにとって難しいので少しずつ。そこからコップ、口先でくわえてのむストローへと段階を踏んでいきます。

どうしたらいいのかわからない…そんなときは、、ぐんぐんキッズなかもず院のあかちゃん外来へご相談くださいね。お待ちしています!

ABOUT ME
ぐんぐん院長サチコ
ぐんぐん院長サチコ
みなさんの一番近くにいる地域の「かかりつけ」小児科専門医。
20年以上小児診療に携わりながら、3人の子育てをしてきました。

子どもの年齢とともに、気になることや悩みも変化していく。
親も子どもと共にバージョンアップしていくことは必要不可欠です。

だからこそ、子育て中に知っておいた方がよいこと、 育児書にはないけれど大切なこと、
いろんな情報が溢れていて困った、、、というときに 正しい知識をサクッと知れる「メモ帖」みたいなのが作れたらいいなと思ってます。

少しずつの記事の更新ですが、楽しみにしていてくださいね。
記事URLをコピーしました