夜尿症の治療ってどうするの?〜デスモプレシンとアラーム療法〜

成長・発達

「おねしょは、放っておいていいですか?どうやったら治りますか?」
日常の夜尿症の診療をしていると、保護者の方から時々相談を受けます。

この記事でも書きましたが、夜尿症の治療はまずは、生活指導や行動療法になります。
そして、それでも改善が乏しい場合は、

夜間の尿量を減らす薬(デスモプレシン)や夜尿アラームを使います。

どちらも、国際的なガイドラインで夜尿症の第一選択治療として位置づけられている、確立した治療法です。

今回は、小児科医の立場から、

「それぞれどんな治療なのか」
「どちらを選べばいいのか」

「安全性は?」

をわかりやすくお話しします。

夜尿症の代表的な治療は2つ

夜尿症の第一選択となる治療には、大きく分けて、

  1. デスモプレシン療法
  2. アラーム療法

があります。

子どもの夜尿のタイプ、年齢、家庭の生活スタイルなどによって向いている治療が変わります。

① デスモプレシン療法とは?

デスモプレシンは、夜につくられる尿の量を減らす働きをする薬です。

私たちの体では、夜になると「抗利尿ホルモン(バソプレシン)」というホルモンが増えます。このホルモンは、「夜は尿をあまり作らないように」と腎臓に指令を出す働きがあります。

もともと成長と共にしっかりとこのホルモンが出るようになり、おねしょが減ってくると言われているおのですが、夜尿症の子どもの中には、この夜間の抗利尿ホルモンの分泌が十分に増えず、寝ている間にもたくさん尿がつくられてしまうタイプの子がいます。

デスモプレシンは、このホルモンに似た作用をする薬です。

日本では夜尿症に対して、原則6歳以上で使用されます。現在の添付文書では通常120μgから開始し、効果が不十分な場合には240μgへ増量することがあります。

デスモプレシンのよいところ

一番の特徴は、効き始めるのが早いこと。

そのため、

「来月、学校の宿泊行事があります」
という場合にも使いやすい治療です。

でも….デスモプレシンはみんなに、どんなときも使える薬ではありません!

デスモプレシンは、とても良いお薬で、適切に使用すれば小児の夜尿症に広く使われている薬です。

ただし、絶対に覚えておいてほしい注意点がひとつあります。

それが、「薬を飲んだあとに、水分をとりすぎないこと」です。

デスモプレシンは尿を減らす薬です。
薬が効いている間に大量の水分をとると、本来、尿として外に出るはずの水分が体にたまり、

「水中毒」を起こすことがあります。

非常にまれではありますが、重症になるとけいれんや意識障害を起こす可能性があるため、ここだけはきちんと守る必要があります。

現在の添付文書でも、重篤な低ナトリウム血症によるけいれんが報告されており、水分摂取管理について十分な説明を行うよう明記されています。

デスモプレシンを飲むときの注意点

日本の添付文書では、投与の2~3時間前(夕食後)から翌朝まで、飲水を極力避けるよう指導されています。

また、

  • いつもよりたくさん水を飲んでしまった
  • 発熱している
  • 嘔吐や下痢がある
  • 胃腸炎などで水分補給が必要
  • 全身状態が悪い

という日には、基本的にデスモプレシンを中止します。

「続けて飲まなきゃ」と無理をする必要はありません。
むしろ、体調の悪い日は飲まない!
守ってくださいね。

小さい子は使いにくいのが現状です

上記の理由から、使いやすいけれど使いにくい場面もあります。それは….

  • 食事が終わって、寝るまでの時間が取りにくい塾通いや小学校低学年の子
  • スポーツの習い事をしていて夜間に水分摂取をたくさんする子

などです。その場合はその日をスキップして使用してもらったりもします。

② アラーム療法とは?

もうひとつの代表的な治療が、夜尿アラーム療法です。

パンツに小さなセンサーをつけて眠り、尿が出始めると、「ピピピ!」とアラームが鳴ります。そこで子どもを起こして、トイレへ行きます。

これを繰り返すことで、「膀胱に尿がたまった状態」と「目を覚ますこと」を少しずつ結びつけていく治療です。

アラーム療法は安全?

薬を使用しないので、身体的な副作用はほとんどありません。

その意味では、とても安全性の高い治療です。アラーム療法はデスモプレシンより有害事象が少なく、効果が出る子も多い治療です。

ただし、アラーム療法には別の意味での「大変さ」があります。

それは、

家族も起きる可能性があること。

です。

最初のうちは本人がアラームで起きず、

「鳴ってる!起きて!」

と保護者が起こす必要があることも珍しくありません。

つまり、

薬の副作用は少ないけれど、家族の労力は大きい治療

とも言えます。


アラーム療法の強みは「治療終了後」

アラーム療法の大きなメリットは、

治療を終了したあとも効果が残りやすいこと

です。

デスモプレシンは即効性がありますが、薬を中止すると再び夜尿が出ることがあります。

一方、アラーム療法は効果が出るまで少し時間がかかりますが、治療終了後の再発が少ない傾向があります。

15研究・1502人を解析したメタ解析でも、治療中の効果については両者はおおむね同等でしたが、アラーム療法のほうが持続的な効果が得られやすく、再発率も低いという結果でした。PubMed

ただし、アラーム療法は途中でやめてしまう家庭も少なくありません。

ですから、

「続けられるかどうか」

がとても重要です。


デスモプレシンとアラーム、どっちがいい?

ざっくり比較すると、こんなイメージです。

デスモプレシンアラーム療法
効き始め比較的早い時間がかかる
薬使用する使用しない
主な注意点水分制限家族の負担
宿泊行事◎△
長期的効果中止後再発することあり効果が残りやすい
向いている家庭手軽に始めたい継続して取り組める

そして実際の診療では、

どちらか一択にする必要もありません。

デスモプレシンで十分改善しない場合などに、アラーム療法を組み合わせることもあります。


「薬かアラームか」より大切なこと

私は夜尿症の診療で、治療法そのもの以上に大切だと思っていることがあります。

それは、

子どもを治療の主役にすること。

です。

「ママが困るから治そう」ではなく、

「本人はどうしたい?」

を聞いてみてほしいのです。

「別にまだ気にならない」

という子もいます。

一方で、

「友達の家に泊まりたい」
「修学旅行までに何とかしたい」
「毎朝濡れているのがイヤ」

と思っている子もいます。

本人が、

「ちょっとやってみようかな」

と思えるタイミングは、とても大切です。


夜尿症は「失敗」ではありません

朝、布団が濡れていると、

「またか……」

と親も疲れてしまいます。

洗濯物は増えるし、本人以上に親がしんどくなる日もあると思います。

でも、夜尿は寝ている間に起こること。

本人がコントロールしているわけではありません。

だから私は、

濡れた夜を評価しないこと

を大切にしています。

褒めるなら、

「寝る前にトイレに行けたね」
「アラームつけられたね」
「薬を忘れず飲めたね」

という、

本人が自分でできた行動

を褒める。

濡れた・濡れなかったを成績表にしない。

それだけでも、夜尿症治療はずいぶん穏やかになります。


まとめ

夜尿症の代表的な治療である、

デスモプレシン療法とアラーム療法。

どちらも世界的に使われている第一選択治療です。PubMed

デスモプレシンは即効性があり使いやすい一方、水分摂取のルールを守ることが安全上とても重要です。

アラーム療法は薬を使用せず身体的な副作用が少なく、治療後も効果が持続しやすい一方、家族を含めて根気よく続ける必要があります。

大切なのは、

「どちらが正しい治療か」ではなく、その子とその家庭にどちらが合っているか。

そして何より、

夜尿症は、その子の頑張り不足ではありません。

困ってきたときが、相談していいタイミングです。

自然に治るのを待つのもひとつ。
治療の力を少し借りるのもひとつ。

その子に合った方法を、一緒に探していけたらと思います。


参考

この記事は、International Children’s Continence Society(ICCS)の夜尿症治療に関する標準化文書、Cochrane Review、およびミニリンメルトOD錠のPMDA最新添付文書(2025年6月改訂)などをもとに作成しています。PubMed

※本記事は一般的な医学情報を提供するもので、個々のお子さんの診断・治療を代替するものではありません。夜尿以外に昼間のおもらし、排尿痛、尿が出にくい、強い口渇や多尿、便秘などがある場合は、治療を始める前に医療機関での評価が必要です。

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